第35期竜王戦七番勝負第3局の感想

藤井聡太竜王に広瀬章人八段が挑戦する第35期竜王戦七番勝負第3局が、10月28日(金)と29日(土)に行われました。

先手の広瀬八段は相掛かりを要求しました。藤井竜王が応じて、お互いに現代相掛かりの理想形、47銀48金37桂29飛型の中住まいになりました。先手は手損で角交換し、22銀型を強要。そこからそれぞれ玉の左側は先手の雁木、後手の銀冠になりました。この囲いの違いがどう出るか。

藤井竜王が自分だけ歩を手放したところで、広瀬八段が決断の仕掛け。後手の弱点を突いて指しやすくなりました。藤井竜王の方は角を設置して反発を見せますが、広瀬八段は的確に対応し、リードを奪いました。藤井竜王の82手目71飛は、指しにくい手でしたが、勝負手。それに対し広瀬八段に迷いが生じます。85手目75同歩では65歩が勝ったようです。AI的にはまだ先手が優勢とのことですが、感想戦を見ると、相当速度計算が難しい形になってしまったようです。

91手目の82角に、92手目の75飛が好手。飛車銀交換の駒損だけに見えにくい手ですが、これで形勢は完全逆転しました。結果的に先手は角打ちに代えて手厚く67金と守っておく手が正着だったようで、アマチュアならばむしろ第一感ですが、トップの戦いでは踏みこむべきところで踏み込まないといけないので、難しいところでした。

そういえば、昔はよく「チャンスの女神は前髪しかない」などと言われたものです。検索してみると、紀元前 4~3世紀のギリシアの言葉だそうです。逆に、大山康晴十五世名人には「一度目のチャンスは見送る」という有名な言葉があります。

本譜に戻って、藤井竜王らしい押したり引いたりの手順から角の取り合いになり、102手目28角。これではっきりしました。広い空間で、単純な銀取りで、直前に角を入手ということで、意外と見えにくいですが、指されてみると、アマチュアにも理解しやすい手です。108手目56馬は、自然ながら、これも指しにくい手。他にも有力手がある中で、ふんわりした決め手でした。

これで藤井竜王の2-1になりました。ここまで3局とも広瀬八段が序盤をリードしており、まだまだ勝負の行方は分かりません。

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