第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局の感想

藤井聡太棋聖の先手番です、戦型は角換わり腰掛銀の最新型でした。

近年最もよく研究されている形だけあって、70手以上も両者ほとんど時間を使いませんでしたが、73手目、藤井棋聖の▲2二歩が、永瀬王座の想定外だったのか、長考が始まりました。
激しい流れになりそうなところにもかかわらず、これは一番早い手という感じではなく、間に合うかどうかぎりぎりで、致命傷を与えるというよりは、取られてもかわされてもじんわり利いてくる、というような手です。最新AIでも評価が分かれています。

永瀬拓矢王座の対応はどうやら、形勢を損ねるものだったようで、以下はそのまま差を広げた藤井棋聖の勝ちとなりました。とはいえ、それはAIの評価値を見ているから言えることです。
終盤、やや永瀬王座の攻めが細いかといわれていましたが、全く簡単ではありませんでした。
あっさり決まったように見えるのは、藤井棋聖の詰将棋能力がなせる業です。
自玉の不詰めを見切り、後手玉に「詰めろ」をかけるという、速度計算の基本的な手続きが、この難しい局面で、この強敵を相手にしてもできるというのがさすがです。

永瀬王座は後がなくなりました。次は先手番ということもあり、何としても勝ちたいところ。
星が傾くとプレッシャーがかかり不利ですが、永瀬王座といえば、強靭な受けと、千日手や入玉を生かした「負けない将棋」。ここまで、周到な準備を生かした戦いを見せているだけに、次局はさらに持ち味を生かした熱戦を期待しています。

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