プロの名局を鑑賞する

プロの対局を鑑賞していると、級位者時代に学んだ基本が、すごく高級な形で出てくることに感銘を受けます。実際に指されなくても、読みの分岐の中で生きています。

先日の棋聖戦第2局を例にとると、114手目に飛車を見捨てて玉を逃がしたのが「玉の早逃げ八手の得」でした。飛車を犠牲に「金は引く手に好手あり」の逆方向に相手の金を移動させて金の働きを悪くする狙いもあります。

そして、その直後の銀のただ捨て。渡辺明名人もSNSで触れていましたが、これ自体は普通の手で、「退路封鎖」の手筋として、本にも載っている手です。

持ち時間が残っていない状況で、このあとの「詰めろ逃れの詰めろ」などの落とし穴を正確に読み切っていたことこそが、渡辺名人も唸るほどの強さでした。

惜しくも敗れた永瀬王座は、「玉の早逃げ八手の得」の手を逃さなければ、端から脱出して「中段玉寄せにくし」から「入玉に負けなし」を目指すことができていたようです。

これらは「終盤は駒の損得より速度」という原則にのっとったやりとりです。

基本を大切にして鑑賞に臨むことで、各々の上達の段階なりに、その道の奥義を味わうことができるというのは、日々の学びの効用と言えるのではないかと思います。

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