本局も渡辺明名人が優勢になり、そのまま押し切りました。
斎藤慎太郎八段はずいぶん悩んでいましたね。
後手玉がずいぶん広く見える将棋で、「堅さ」よりも「広さ」という、現代将棋の価値観の出た将棋でした。
ただ、途中には価値の高い金で先手陣をはがす手や、重たい銀の重ね打ち、香車の筋を止めるために飛車桂の行き場に歩を打つなど、一見筋悪に見える手がたくさん出てきました。
こういうのは「異筋」と呼ばれることが多く、手本とすべき「本筋」とは異なり、少し形が違えば悪手になる可能性もあります。「マネしないほうがいい手」と呼ばれることもあります。
「異筋」が「妙手」となるためには、「読み」の裏付けが必要です。
渡辺名人は最善手を指し続けられたのは、まさに第一人者にふさわしい「読み」の精度によるものでした。
斎藤八段からすれば、先手番を落としてカド番を迎えるのは厳しいですが、二年連続挑戦の実績からもわかるとおり、力で見劣りするわけではありません。ただし、後がなくなったということで、第5局は、これまで以上に作戦に注目です。