小山怜央さん棋士編入試験五番勝負第2局の感想

12日に、小山怜央さんの棋士編入試験第2局が行われました。

先月28日に行われた第1局では、勝率第1位の徳田拳士四段に後手番で完勝していました。
また先日の朝日杯ではB1棋士千田翔太七段も圧倒。千田七段は3年前に藤井聡太七段(当時)を破って優勝した強豪で、将棋界のソフト研究の先駆者です。

今回の試験官、岡部怜央四段は公式戦五連勝中で、特に最新の対局ではB1棋士佐々木勇気七段に勝っています。一方、小山さんの実力はすでに定評があるところ。好調同士の対局です。

小山さんの先手番で、戦型はまたも角換わり腰掛銀の最新形。小山さんの研究は全くスキがないようです。一方後手の岡部四段も、アマ相手にこの戦型を避ける道理はないでしょう。

後手が同形を避けて玉の位置を中央に寄せたのを見て、小山さんはシンプルに玉を入城しました。
途中手数を調整しないのは最近では珍しいような気もしますが、深い研究に基づく見解があるのだと思います。

岡部四段は一度手待ちをしたので、自分も入城したのでは手が遅れるとみてか、先に仕掛けました。小山さんは仕掛けの筋に飛車を展開して反発、この戦型では頻出の手順です。後手は切った歩を自陣に打って手損ですが、先手が飛車を戻すと、また桂跳ねから攻めかかれる形です。

先手番なので攻めていきたいけれども具体的手順も難しいようでしたが、小山さんは4筋に位をはり、角を据えて玉を右に移動していきました。岡部四段は端から手を付け、飛車先突破を狙いますが、小山さんは相手にせず玉の引っ越しを完了させます。駒落ちにはよく見られる三段玉で、薄いけれども捕まえにくい形です。後手はいつでも飛車先突破を確定させていますが、角金交換の攻めなので、決行するタイミングが難しいところ。

先手は仕掛けを受けて歩を蓄えていたため、飛車先を突き捨て後手のコビンを開いてから、銀を突進させていきました。後手は角金交換から飛車を成りこんで行きます。先手は要の銀を金ではがされますが、力強く同玉のいわば「腰掛玉」。何かあったら終わりですが、小山さんは読みに自信を持っているようでした。馬を作った後は、猛攻をしっかりしのぎ、こんどはいわば「棒玉」とでもいうべき形で耐えました。後手ははっきり手負けですが、先手が寄せ間違えたら即逆転する「キャンセル待ち」。しかし、小山さんは緩まず、最後は「焦点の桂」で仕上げました。

これで小山さんはプロ資格を得るまであと1勝となりました。
正直なところ、最近の内容・成績共に、プロとして申し分ないと思います。
それでも、試験は続き、後1勝しなければ、プロにはなれません。
次の狩山四段は独特の世界を持っている棋士。これまでとは違った緊張感があると思います。

第3局は年明け1月に予定されています。

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