第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局の感想

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負の第3局が、1月28日(土)、29日(日)に石川県金沢市「金沢東急ホテル」で行われました。

先手藤井聡太王将の居飛車に対し、後手羽生善治九段は角通を止めました。雁木にも振り飛車にもできる柔軟性のある形で、先手は角が向かい合った形とは違った神経の使いかたを要求されます。

先手藤井王将は玉移動の前に角上がりの工夫を見せました。雁木に対応しやすい手であり、居飛穴に組んだ際にも無駄にならない手です。ただパッと見は違和感のある手で、角頭攻めなど大丈夫なのか、という気もしますが、羽生九段は冒険せず、居飛車雁木に戦型を決めました。

先手は常用の早繰り銀で、後手は手厚く二枚銀雁木です。藤井王将は3筋から仕掛け、歩の取り込みを利かしてからじっと飛車浮き。アマプロ問わず類型は数多出現しているでしょうが、この手を指した人は相当少ないはず。右桂の活用を見せて、決戦を要求しています。

双方角と銀を持ち合い、敵陣の方へ歩が伸びます。戦える形なのは間違いないですが急所の見えにくい将棋。このように流行形のよくある仕掛けから、見たことのない形になるのは、さすが歴代最強を争う棋士の対局という感じがします。。
この、「見たことのない形」がポイントで、真の力が問われます。
例えば、先手の玉寄りがプラスなのはわかるのですが、間合いとしてどうなのかは難しいところ。

さて、その後は、後手が桂跳ねを防いで歩を突いたためできた空間に、先手が素直に角を打ち、馬ができました。後手は金銀に玉まで参加して前線を盛り上げて厚みを作りますが、玉上がりの位置に疑問のようです。また、先手の右桂活用を封じ切れなかったのが痛く、一時間以上余しての終局となりました。

この形からこれだけすっきり勝てる棋士は藤井王将だけではないでしょうか。藤井王将の読みの深さ、形に対する明るさがよく出た将棋だと思います。とはいえ、羽生九段もこういう新鮮な形を考えるのが大好きな棋士。後手番ということもあり、ダメージは少ないかと思われます。羽生九段の作戦自体は、この超強敵にフィットしている印象で、第4局も見どころの多い将棋になりそうです。

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