里見香奈女流五冠棋士編入試験五番勝負第3局の感想

13日に、里見香奈女流五冠の棋士編入試験第3局が行われました。

試験官の狩山幹生四段は岡山県倉敷市出身で、大山康晴十五世名人の同郷に当たります。
その影響もあってか受け将棋ですが、若き日の大山十五世名人は激しい攻め合いの将棋も多かったのに対し、まだ20歳の狩山四段は極端なほどの受け重視です。

うけまくって相手を息切れさせて勝つことを「受けつぶし」といいますが、ソフトによる攻め筋の発掘の進んだ現在ではなかなか聞く機会がない言葉になりました。
狩山四段は、この「受けつぶし」のスタイルで三段リーグを勝ち抜いた、個性ある棋士です。

戦型は狩山四段の居飛車に、里見女流五冠の後手ゴキゲン中飛車になりました。
里見女流五冠の5筋歩交換に対し、狩山四段は55歩と蓋をします。これで飛車が死ぬわけではなく、玉頭の歩をかすめ取って飛車は生還するのですが、そこで手数がかかるので金銀を盛り上げて抑え込みを目指します。

里見女流五冠は小刻みに飛車を動かし、狩山四段は金を忙しく動かして、相撲でいうところの差し手争いが続きます。形勢は難解ですが、里見女流五冠の美濃囲いが固く、いかにして食らいつくかというところ。

59手目、端攻めに備えて86銀の瞬間がチャンスだったようです。この銀を角でむしり取って48銀として攻めがつながりそうとのことでした。ただ、角銀交換の駒損してから玉から遠い4筋に銀を打つのは随分筋が悪く見えます。居飛車からすると嫌味なのですが、カド番の里見女流五冠は選びにくかったものと思われます。

本譜玉側の桂を応援に出しましたが、狩山四段は金を引き揚げながら急所の垂れ歩を取り切り、駒がぶつかりにくい形になってしまいました。結局、振り飛車は角銀交換を避けたのに、飛車銀交換になり、端攻めも逆用される形となり、試験官の勝ちになりました。

里見女流五冠の編入試験は0-3で終了となりました。
正直、受験資格獲得時の将棋の内容なら、合格も夢ではないと思っていただけに、試験直前からの不調には驚きました。将棋の奥深さと、プロの本当の強さ、怖さを知り尽くしている里見女流五冠だからこそ、負けられない勝負の中で、手に迷いも出たではないかと思います。

終局後の記者会見では今後の受験の可能性にも触れられていましたが、それ以上に、実力不足という自己評価と、さらなる実力向上目指すことを何度も語っているのが印象的でした。

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