お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第5局の感想

9月5日(月)・6日(火)に王位戦第5局が行われました。
カド番の豊島将之九段の先手で、作戦選択に注目でしたが、戦型は、またもや角換わりになりました。

今回のシリーズは全局角換わり腰掛銀です。
5局連続ともなると、作戦の選択としては一見単調な印象を受けます。
しかし、藤井聡太王位に対して不利にならないレベルの準備をすることは相当に負担が大きく、挑戦者側からすれば、できるだけ想定の形をしぼりたい意味はあったと思います。

もちろん、定跡の結論への探究心もあると思いますし、AI研究の時代においても、自分こそが道を切り開くべき第一人者であるという自負もあるのではないかと思います。

さて、対局は、4筋で戦いが起こり、いったん落ち着いて互いに玉形の整備があった後、再び仕掛け、先手が中央の位を取り返したのが大きそうに見えましたが、後手からの反撃も厳しく、先手が不自然な形で耐えることになりました。それでも、攻め合いがひと段落したところで後手が自陣に手を戻してくれれば、先手も形がほぐれてきそう、と言ったところ。

そこで好手△13角が出ました。この角はそのままにしておけないと、全力で追いましたが、藤井聡太王位の速度計算は正確で、角を取りきる間に先手陣は受けがなくなりました。
先手は自陣の角の位置を直しておくのが勝ったようです。

これで藤井王位の防衛が決まりました。藤井王位はこれでタイトル10期目で、歴代最速記録だそうです。

豊島九段は残念でしたが、第1局のように優勢になる形は、相当な数を用意していたのではないでしょうか。番勝負のなかでこのハイレベルな準備が奏功し、藤井王位が追いつめられる展開もあり得るかもしれません。

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